2014年8月14日木曜日

サイバーエージェント社長が明かす「通る企画書」〜本日の気になった記事〜

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK17009_X10C14A7000000/

──藤田さんは「新規事業の企画書を日本一多く見ている経営者」として知られています。それこそ千本ノックのように、毎日、寝ても覚めても企画選考をしているとか。そこで、企画書を作る前の心構えや、「通る企画書」と「ボツになる企画書」の差などを教えていただけますか。

藤田晋社長(以下、藤田):よくある勘違いの話からしましょうか。まず、企画書を一生懸命に作っている自分自身を、「すごく仕事をしている」と勘違いしている人が少なくありません。「企画を詰めていく」ことはとても大切ですが、「企画書を詰めていく(企画書の完成度を高める)」こととは別です。

 企画の問題点を潰して、より精度の高いものに仕上げる工程は、企画書を作っている時ではなく、作り始める前にするもの。見栄えの良い企画書を作ることが大好きな人の中には、考える時間が「1」で、作っている時間が「9」の人もいる。それは全く逆で、「9対1」でないとダメ。

 企画書を作る前にひたすら頭を絞り、「これだったら大丈夫」というところまで考え抜く。そこまですると、企画書を作るために時間をかけられなくなります。ですから、作ることに時間をかけている時点で、その企画書は通らない可能性が高いですね。

──内容が整理できてなく、何を説明しているのか分からない企画書には、どのようなアドバイスをしていますか。

藤田:まず、「分からない企画書」であっても、頭ごなしに否定することはありません。よく分からない「多くの人が否定する企画」は、“ダイヤの原石”の可能性があるからです。ブログをはじめ、ツイッターやフェイスブックといった斬新なネットサービスは、企画書では、その魅力をうまく伝えるのは難しいでしょう。実際に利用してみないと、面白さが分かりにくいサービスだからです。企画書では理解できなかったが、やってみると、とても面白い。そんな企画がたまにあります。

■提案者の熱意は本物か…負けず嫌いの反論は見透かされる

──ダイヤの原石の可能性があっても、その場では、「分からない」と指摘するわけですよね。


藤田:はい。分かりませんから。けれども、ネガティブな質問をしたり、企画の不備を指摘したりした時に、その提案者の熱意が本物かどうか、ある程度分かります。本物の場合、提案者が「自分は分かっている」という確信めいた目をしています。そして、分かりにくいことを承知のうえで、何とかその企画の素晴らしさを伝えようとしてきます。

 一方、単にダメな企画の場合は、ネガティブな質問に対して答えが詰まります。また、しつこく粘るにしても、目的が「企画を通したいから」になっていることが、明らかに見て分かります。企画の甘い点を指摘しているだけなのに、人格を否定されているような気になって、反論してきます。

 熱意が本物の時は、一生懸命に説明しながらも、「別にあなたに認められなくてもいいですけど」という顔をしていたりします。そうなると逆に、こちらとしても、「何かあるのか?」と気になり始めます。

──「負けず嫌い」で反論してくる人は論外ということですね。

藤田:企画の説明時に、そんな負けず嫌いは、はっきり言って不要です。広告の受注であれば、仕事を取ることが重要なので、やや強引でも提案を通そうという気持ちになるのは分かります。受注が決まれば評価されますから。ただ、社内で通す企画書などは、「絶対に企画を通す!」と説得に頑張られても困るだけです。

──勘違いで企画に自信を持っている人もいませんか?

藤田:マトリックスで市場分析して「ここがブルーオーシャンです!」と目を輝かせて話す人はダメですね。そんなに簡単に市場分析できるはずがありませんし、そもそも市場を大まかに4つに分けて「ココを狙えば大丈夫!」と言われても「確かに」とは言えません。

 企画書を作る時に陥りがちな罠(わな)だと思いますが、「よく作れた企画書」に自分自身がだまされてしまっていることも少なくないような気がします。それを理解せず、熱く語られると聴いているのがつらくなります。

■作った企画書にだまされるな、リスクには対応の準備を

──「ポジショニングマップ」などは、事業計画書ではよくありますよね。

藤田:確かに話の道筋からして、筋が通っている縦軸と横軸が用意されていて、そこにきちんとマッピングされている場合は、とても参考になります。ですが、意味もなく図解したり、よく分からない要素を縦軸と横軸にしたりするケースが多すぎて困ります。「成功要因を研究して作りました」というものは、現実感がなくて大抵ボツになりますね。これも、自分が作った企画書にだまされている典型的な例ですね。

──ほかにもダメな企画書の典型例はありますか?

藤田:分厚い企画書は、それだけでダメですね。企画書を見て判断する人は、基本的にそこからリスクを探します。それがすぐに分かるように整理されていないと、企画書として成立しません。

──メリットだけでなく、リスクも書いた方がいいですか?

藤田:いえ、それは必須ではありません。書き出すと長くなる場合は省いて構わない。ただ、「ここが重要な部分だが、大丈夫か?」という点には、すぐに答えられるように準備した方がいいですね。口頭での説明が難しいなら、別途、補足資料を用意しておくとか。

 よくある話ですが、大きな金額を動かした企画書ほど、3ページ程度のシンプルなものだったりします。ですから、分厚いだけで「ダメだろう」と思われてしまいます。

■そこが気になる…ふと浮かぶ「3つの疑問」に絞って答える

──そもそも、びっしり書かれた企画書を、隅々まで読む人はいませんよね。

藤田:それを分かっていながら、伝えたいことをすべて盛り込もうとして分厚くなってしまっている企画書は本当に残念ですね。結局、「何がいいたいのか」を伝え切れていません。

 私が企画書そのものに説得させられるパターンは、最初に「ちょっといいな」という話、つまり結論が書いてあって、「それならここが気になるな」という2~3個の疑問について、絶妙なタイミングで企画書に答えが盛り込まれているものです。

 この「ふと浮かぶ3つぐらいの疑問」にしっかり答える秀逸な企画書だと、「任せて大丈夫だろう」と安心させられます。ただし、相手のあらゆる疑問をなくそうとして、「これについては○×で、さらにこれは△□で」と余計なことまで一つひとつ説明すると、大事な3つの疑問に答えていたとしても、相手に「分かっていないな」と思われてしまいます。

──「余計なことまで伝えない」ということですね。

藤田:相手と同じ視点で考えていないとそうなります。ここは「想像力」が勝負になってきます。交渉ごとでも同じですが、論理展開がしっかりできていたとしても、“相手と同じ論理展開”で伝えられなければ説得はできません。

■他人のアドバイスにも耳を傾ける、「柔軟な対応」が信頼を生む

──「企画内容はいいけど、任せていいか迷う」という人はいませんか。

藤田:先ほど説明した「確信めいた目」をしている“やり切る覚悟のある人”は、任せて問題ないと思います。ただ、自分の頭の中にあるものがすべてで、他人のアドバイスを聴かないようだと困ります。

 大きなプロジェクトになればなるほど、他人のアドバイスを柔軟に盛り込んで企画を改善していける人でないと難しい。広告会社の熟練の営業マンなどは、信念があるのかどうか不安になるほど、顧客の意見に対して「ですよね! それでいきましょう!」と言って、大きな仕事を仕切っています。これは極端な例ではありますが、そのぐらいの柔軟さが、実際のプロジェクトをやり抜くには必要です。

──最後にアドバイスを。

藤田:企画を通す立場の人は、企画の説明をされた時、何よりその企画のリスクを考えます。そういった目で見られていることを踏まえて、本当に伝えたいことのみを伝える、シンプルな企画書に仕上げることが大切です。想像力を働かせて説明する相手に合わせて、何を伝えるかを検討し、しっかり説得できる企画書に仕上げましょう。



〜ここまで〜

・ 企画を考えるときはしっかりと考えてから書き始める
・ もっともだと思われるアドバイスはしっかりと取り入れる

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