2015年7月22日水曜日

気になった記事 〜社員をマネジメントに巻き込む秘策〜

サイバーエージェントには、ほかの会社にはない一風変わった制度が多く、これまでもそのいくつかを紹介してきました。今回は、100万円の賞金をかけ、部署やプロジェクトごとに「マニュフェスト冊子」を作る制度について紹介しようと思います。

 「プロジェクトレポート」と呼ばれるこの制度は、各部署やプロジェクトチームごとに分かれて半期の目標設定を冊子にまとめ、社内に公表するものです。原則すべての組織の参加を義務とし、昨年10月から半期に一度、期初(4月と10月)に開催することにしました。冊子の形態やページ数は決まっており、チーム全体・メンバー個人の目標設定と、メンバー全員の「顔写真」が載っていることもルールです。

 ですが、それ以外は自由。2回目となった今年4月は約200の部署やチームが参加し、投資家向けレポートのような凝ったデザインから、ルールを逸脱した新聞風のものまで、個性あふれる冊子がそろいました。これを役員会で審査して、8つの部署を表彰し、最優秀賞チームには「好きに使ってよい」と賞金100万円を会社から渡しました。


 チーム全体と個人の目標が掲げられた冊子は、政党のマニュフェストのごとく、宣言した手前、そこに向かって走らざるを得ないという効果をもたらします。メンバー全員の写真とともに印刷物になっているだけに、裏切りにくくなるのです。

 それはそうなのですが、実は、真の狙いは別のところにあります。「メンバー全員をマネジメントに巻き込む」というものです。

 冊子を作るにあたって、各チームには終日を使った「合宿」に臨んでもらいます。まずは半期の目標を設定し、それをどう表現するかデザインなどのコンセプトを考え、印刷物に落とし込む。この中で、メンバーの役割分担と個々人の目標設定も明確にしていきます。

 そうした一連のプロセスをメンバー全員が共有することで、リーダーだけではなく、みんなが「高い視点」に立つことができると考えました。思いついたきっかけは、2年ほど前に社外の方に「伝説の営業チーム」が作成した社内報を見せてもらったことです。その社内報には、営業チームの目標とともにメンバー全員の笑顔の写真が掲載されていました。

その頃私は、半期に一度開催している役員による事業コンテスト合宿「あした会議」でうまくいったように、もっと多くの社員をマネジメントの意思決定の場に巻き込む方法はないか考えていました。

 あした会議では、それぞれの役員が社員からメンバーを集めてチームを編成し、新規事業や制度改革などのプレゼンテーションに臨みます。社員を会社の経営に巻き込む、という大きな効果があり、参加した社員の視点は一気に経営層のレベルまで上がります。

 これを、もっと細分化したものが、プロジェクトレポート制度です。自分たちのチームのプロジェクトレポートを製作する、その過程を共有することでマネジメントに巻き込むことが可能だと考えたのです。

 ただし、私は今年4月の結果を見て、次回開催の10月から、強制参加ではなく任意参加とすることに方針を変えました。いくつかの優秀な冊子の出来は目を見張るものがあります。メンバーみんながチームの一員であることを誇りに思っているんだろうな、と感じられる内容です。一方、そうではない「やっつけ」の冊子が散見されたのも事実です。

 日々の業務が忙しい中、嫌々、片付けるのであればまったく意味がありません。そういったチームは、リーダーがメンバーを巻き込むことに失敗しているわけで、結局はリーダーの資質や統率力に左右されるのです。結果として、優秀でやる気のあるリーダーのチームしか参加しなくなるかもしれませんが、それは仕方がない。半面、生き生きと冊子作りに取り組むチームが1つでもいれば、それなりに意味はある。そう思って、次回を期待しています。

〜ここまで〜
日々の業務が忙しい中、嫌々、片付けるのであればまったく意味がありません。そういったチームは、リーダーがメンバーを巻き込むことに失敗しているわけで、結局はリーダーの資質や統率力に左右される
→ マネジメントの意思決定の場に巻き込めるか?

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