2015年9月2日水曜日

子会社社長に新卒若手を起用するメリット〜気になった記事〜

気になった記事

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サイバーエージェントグループでは、新卒若手を子会社の社長に積極的に抜てきしています。入社5年内に限定しても、これまで延べ29人が子会社社長となりました。中には、新卒1年目で子会社社長に就く例も珍しくありません。

 その理由について、「優秀な社員の流出を防ぐ抑止力としての機能を狙っている」のではないかと言われることがありますが、我々の意図は違います。戦略的に若手を抜てきしているのですが、そこには合理的かつ、もっと前向きないくつかの理由があるのです。

 まず1つ目の理由として、「ロスがない」ということが挙げられます。既存事業を任している人間を子会社社長とすると、その既存事業に少なからず影響が出ます。しかし新卒若手であれば、まださほど大きな仕事を成し遂げたわけでもなく、既存事業への影響は軽微で済みます。だからといって、既存事業での経験がないから上手くいかないのでは、という指摘は的を外しています。

 経営者というのは、それまでの実務経験が直ちに生きるという仕事ではなく、経験がないから経営ができないと断じることはできません。また、インターネットやスマートフォンといった分野では、まだ誰も経験したことのない新しいことに挑戦していく必要があり、必ずしも経験が役に立つとはいえません。むしろ、無理に過去の経験を生かそうとすると間違えやすくなります。実際に当社でも2011年末に新卒内定者4人だけでスマートフォン向けアプリ開発のシロクという子会社を立ちあげましたが、堅実な経営を続けており、現在はアプリ運営者向けの支援ツールを提供する会社として数億円規模の営業利益を見込んでいます。

 2つ目の理由は、社内の新規事業ではなく、子会社化し、経営を任せることで、「モチベーションが高まる」というものです。サイバーエージェントは2015年9月期の連結売上高を2400億円と予想しています。その中で新規事業の業績は微々たるものであり、全体の規模感に埋もれてしまいます。しかし子会社化し、独立した決算を出すことでその成長がより可視化され、注目もされます。それだけ、任された人間のやる気が増すのは当然でしょう。

 結果、人材育成という観点で見ても、任した子会社社長はものすごい勢いで成長します。これが3つ目の理由です。
 新卒の能力を最大限、引き出して成長させる最も有効な方法の一つが、子会社社長のポジションを与えることだと思っています。子会社と言えども、若くして社長となればプレッシャーがかかり、猛烈に頑張ります。ゼロからイチの立ち上げ期においては、手を抜くことを覚えたベテランよりもむしろ大きな可能性を感じさせてくれます。

 前回の経営者ブログでも紹介しましたが、新卒1年目の2013年に子会社、7gogoの社長となった森正樹もそうです。もともと社長室の配属だったので成長の差がよく分かるのですが、社長室にいた頃と今とでは、見違えるほどです。

 子会社の立ち上げを経験した人材は、サイバーエージェント本体の経営を担う重要な幹部候補にもなり得ます。実際に、8人いる本体の取締役のうち、半分の4人は新卒5年内で子会社社長として事業を立ち上げた経験があります。ただ、これをもって「人材育成」のためだけに子会社社長抜てきを続けていると捉えられては困ります。人とともに、事業としてもちゃんと育っているからです。

 サイバーエージェントの歴史を見ると、会社を支える重要な事業の多くが、新卒5年内の子会社社長によって立ち上がったものです。今、専務取締役を務めている岡本保朗は新卒4年目の2003年、シーエーサーチという子会社社長として、検索エンジンから自社サイトへの訪問を増やすためのマーケティング手法「SEM」事業を立ち上げました。その事業は規模が大きくなったため2007年に本体に吸収しています。

 というように、若くして子会社社長となった彼らがサイバーエージェントの成長の原動力となっていると言っても過言ではありません。やる気が出て、人と事業が育つのであれば、子会社をどんどん作って若手に任せるべきだと思うのですが、それは、やはり大企業では難しいことなのでしょうか。
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