2014年11月3日月曜日

KDDI、女性躍進を支える「役員補佐」の経験値 〜本日の気になった記事〜

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO79041090Z21C14A0000000/

〜ここから〜
10月、KDDI(au)の女性社員約40人が管理職に就任した。一度に起用された人数としては過去最多だ。4月には同社初の女性役員が誕生している。顧客の半数は女性なのに、ほんの2、3年前まで管理職の女性比率は数%にとどまり、役員はゼロだった。「おかしいじゃないか」。トップの言葉をきっかけに、女性の登用は加速していった。

■大局観を体得するために

 「会社について知らないことがあまりに多いと実感した」。宣伝部長の矢野絹子は3年前を振り返る。矢野は女性幹部を輩出する取り組みのひとつとして始まった役員補佐制度に基づき、2011年から1年半の間、社長の田中孝司の「補佐役」を務めた。

田中社長の補佐役を務めた矢野絹子宣伝部長
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田中社長の補佐役を務めた矢野絹子宣伝部長
 補佐役として、会議で出た案件の進捗状況などを田中に伝えるサポートをしてきた。そして、もうひとつ重要な任務は、幹部候補としての経験を積むこと、つまり会社についての勉強だ。役員の背中を見て経営の現場を体感させる制度で、社員が大局的に経営を見渡せるようにしておき、幹部登用への道筋をつけようという狙いがある。

 役員補佐制度は基本的に執行役員専務以上に男女1人ずつペアで補佐役を配属する。矢野は「基本的に役員が出席する社内会議にはほとんど出席した」と、忙しく新たな発見がある毎日を思い起こす。補佐役になる前には料金に関する部署にいたので、投資家向け広報(IR)や技術の部門の会議は未知の領域だった。「会社の中でどのような議論がなされるか、意思決定のプロセスを知ることができた」と言う。知らないことを恥とは思わず、社長が出ない会議にも勉強のために参加した。

 矢野は宣伝部長としてCMを作成するときなど、各部門の本部長に相談しやすくなったという。「電波を束ねて高速化するキャリアアグリゲーション(CA)の広告も、どんな部門がどれだけ汗をかいて実現したかを実感をもてるようになった。ひとつ高い段から会社を見渡すことができるようになった」。補佐役の経験を生かしている。

 「女性社員は全体の2割いるのに、女性管理職が少ないのはおかしい」――。田中が12年のこうした発言から動き始めたのが、女性管理職の目標値を設定したり、部下を持つ女性役職者を増やしたりする女性登用に向けた「ポジティブアクション」だ。

 KDDIの社内で役員候補になるべき女性管理職が手薄だった。約1万1000人の社員のうち、女性は2割いるが、当時の女性管理職はわずか数%にとどまっていた。

 スマートフォン(スマホ)を利用するのに男女の差はない。販売店で接客するのは女性が多い。電話によるサポートや法人向けの営業担当も女性が活躍している。スマホの本体、料金、通信ネットワークで他社との差別化が難しくなってきた。首脳陣には男性のみの視点だけではサービスの幅が狭まるとの危機感がある。

KDDIで管理職になるには、年に1回の試験を受ける必要がある。30代半ばから40代前半にかけての社員が主な対象だ。直近3年間の評価や一定の英語力が必要で、所属長が試験を受けるかどうかを決める。無事合格すれば「管理職」となり、人事異動で部下を持つグループリーダーや室長といった「ライン長」に就くことになる。

 田中の意を受け、12年に始まったのが「女性ライン長登用プログラム(LIP)」だ。経営の意思決定の場に女性を増やす大きな目標で、15年度に女性のライン長を90人と全体の7%に引き上げるというものだ。12年4月の女性比率は2.6%で、14年4月は4.3%にとどまっている。

■思い込み払拭と意識改革を迫る

 そもそもKDDIにはライン長の候補となる管理職が少なかった。まずは女性が管理職試験を受けるようにすることから着手した。KDDIの女性社員は「管理職の先輩も少なく、自分は管理職にならないものだと思い込んでいる人も多い」と人事部ダイバーシティ推進室長の小島良子は分析する。そのため、LIPでは社内勉強会や集合研修を通じて、女性のキャリアプラン形成を手助けする。男性管理職を交えて話し合い、女性の活用について自由に議論することもある。

 12年までは育児短時間勤務制度の期間延長やテレワーク制度の拡大など、女性が働きやすい環境の整備を進めてきた。LIPでは、幹部候補を育成する段階にステップアップしている。小島は「女性社員が持つポテンシャルを引き出したい」と力を込める。

 女性登用の成果は出ている。スマホ購入後、ユーザーが次に必要になりそうな操作について動画で紹介する先回りサポートもそのひとつ。主導したのは女性、カスタマーサービス企画部長の木村奈津子だ。仕事を最優先する男性の方が上司には使いやすいという固定概念がある日本企業は少なくない。KDDIは異なる価値観を持つ存在に期待する。

 今年度、管理職試験を今後受ける可能性のある約100人に人事部がインタビューを実施した。業務の不安など日常的な会話の中から、管理職になる意識があるのか、さりげなく確認した。社員のキャリアプランは各事業部で話し合うことが多かったが、「人事部として積極的に介入して多様性を高める」(人事部長の白岩徹)。

 4月に経営企画本部の財務・経理部長の最勝寺奈苗が役員に当たる理事に女性として初めて昇格した。トップ主導の意識改革が少しずつ、着実に浸透しつつある。
〜ここまで〜

意識すること
・ 女性をどう生かすか?
幹部補佐制度、そして男性幹部との話し合いの場を設ける

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