2016年10月13日木曜日

本日の気になる記事 〜社外取締役が10年間不在だった理由〜

〜ここから〜
■形ばかりの社外取締役など

 サイバーエージェントには、2000年の東証マザーズ上場時から2006年まで社外取締役がいましたが、そこからは不在が続いています。それは、当社に最適だと心の底から思える社外取締役が見つからなかったからです。

 社内の取締役だけでは見えなかったことや、気づかなかったことに助言をもらえることが社外取締役の一つのメリットといわれますが、その企業の理念や文化などの目に見えない価値観を理解せず、表層的な指摘だけをもらっても意味がありません。日常は会社にいない社外取締役に対し、理念や文化など会社の背景から、毎回説明し、納得してもらう努力が必要なのであれば、意思決定のスピードを大きく損なうと思います。それは我々のような変化の激しい業界では大問題です。

 また社外取締役の役割として、業界や会社の「外」にいる人の意見が欲しいだけなのであれば、知人や友人の経営者との付き合いの中でいくらでもアドバイスをもらえますし、お金を払ってコンサルティング会社に頼むこともできます。

 社外取締役の設置は経営の監視や不正の防止に有効ともいわれますが、昨今の粉飾決算、不正会計の事件を見ると首を傾けざるを得ません。後ろめたいことをしている会社が形だけの社外取締役を置き、ガバナンスを強化しているように見せかけることは、やろうと思えば可能です。

 形ばかりの社外取締役で投資家を安心させる――。我が子のように大切に会社を育てているのに、そんな適当なことはしたくないと思い、サイバーエージェントではしばらく社外取締役の設置を見送っていました。一方で上場企業として優等生でありたい、との思いもあります。

 では適切な社外取締役とは何か。熟慮の末、今年7月、白羽の矢を立ててから約1年待って、ようやく1人の社外取締役候補に顧問として就任していただきました。元リクルートホールディングス相談役の中村恒一氏です。今年12月開催予定の定時株主総会でお諮りする予定です。。人をやる気にさせ、人を生かすことによって会社を伸ばそうという大前提に立って経営しているからです。

中村氏に白羽の矢を立てた理由の一つは、当社に社風や価値観が非常に近いリクルートで、長年にわたって経営に携わってこられた方だからです。社風が近いのは必然といえます。というのも、私がリクルート出身者の下で学び、経営の手本としてきたからです。

 当社には、資本主義ならぬ「人本主義」のような文化があります。事業を立ち上げる理由のほとんどは、その人がやりたいと言ったから、あるいは、その人がいるから。異動も、原則、本人の希望に基づくもので、ある日突然、「人事異動」と上から命令を押し付けるようなことはしません。人をやる気にさせ、人を生かすことによって会社を伸ばそうという大前提に立って経営しているからです。

 世間一般的にいえば、そういう会社はむしろ少数派なのかもしれません。しかしながら、我々はそれを強みにして会社を伸ばそうとしているのに、本当の意味でその価値観を共有してもらえる人でなければ、当社の社外取締役は務まらないと思っていました。

■「2人必要」「義務化」に?

 社外取締役をお願いするのであれば、ぜひリクルートのOBに。そう思い、企業文化の重要さを理解し、また副社長として柏木斉社長(当時)を支え経営の根幹にいた中村氏に昨年、就任を直接、お願いしました。当時、中村氏はリクルートの顧問であり、お返事をいただけなかったのですが、私は「顧問契約が終わるまで待ちます」と言い、今年春にようやく「やりましょう」と言っていただけたのです。

 中村氏の就任が形だけのものとならないよう、社外取締役就任前である今から、月に1回は最も重要な経営会議である常勤の取締役会にも参加いただいています。また社内を知っていただくために、役員や社員との食事会などもお願いしています。

 「社外取締役は2人必要」と言われるようになり、「法律で社外取締役の義務化を」との声も根強くあります。しかし、だからといって安易に選任するのは納得できません。会社は千差万別であり、全ての上場企業に一律の規定を適用することは現時点でも無理があると私は思います。自社に適した社外取締役のあり方は、それぞれの会社が考え抜くべきではないでしょうか。

〜ここまで〜

気づいた点
新規事業は、その人がやりたいと言ったから、あるいは、その人がいるから。異動も、原則、本人の希望に基づく 企業のガバナンスを強化するという目的で、社外取締役の数がかつてないほど増えています。2015年、上場企業に対して社外取締役の設置を推奨する企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)の適用が始まったこともあり、上場企業の社外取締役は7000人を超えたようです。ガバナンスを強化するのは大事なことだと思いますが、一方で、本当に必要で、実際に機能する社外取締役を見つけるのは非常に難しいと実感しています。


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