2014年10月15日水曜日

上手な「人事異動」のやり方 〜本日の気になった記事〜

 〜ここから〜
 サイバーエージェントでは8月1日付で、ブログなどを主軸とするネットメディア「アメーバ」事業に関する大規模な構造改革を行いました。人員を全1600人の半分にあたる800人とし、800人を他部署へ異動させるというものです。今回は、このような大規模な人事異動の「やり方」について、私なりの考えを書きたいと思います。

 今回、異動となった800人は、スマートフォン向けアプリ開発などの成長が見込まれる新規事業に振り分けました。アメーバ事業も成長を続けており、じり貧というわけではありませんが、全社の中の収益と人員のバランスを考え、適正なサイズとし、成長分野に人的資源を集中投資するという極めて前向きなものです。

 ですが、これだけ大きな異動が生じる改革となると、社員のあいだに不安が生じるのは当然です。残る人、去る人が2分されるわけで、それぞれ違った種類の不安を抱えることになるでしょう。経営者としては双方に、できるだけ早く前向きになって新体制に臨んで欲しいものです。そこで私は、3つのことを心がけました。

 1つは、残る方がいいのか去る方がいいのかを分からなくさせる、ということです。アメーバ事業は、人員を半減させても収益やメディア規模を維持させなければなりません。残る人には負担となりますが、それができる実力と実績のある人間を、時間をかけて選定したつもりです。

 一方で、異動する半分の社員のモチベーションも考えなければなりません。アメーバ事業に忠誠心を持って仕事をしていた人がいきなり異動しろと言われたら、反発したくなるかもしれません。しかし今回、異動対象者がワクワクするような成長分野の事業を800人分、新たに作りました。要するに、残る人も異動する人も、やりがいを感じられるようにしたのです。

 2つ目は、トップが前に出て説明を尽くす、ということです。今回は、対象となる1600人全員が入る大きな会場を借り、私から構造改革を実施する背景や狙い、そして、残る人にも異動する人にも同じくらいの大きな期待がかかっていることなどを話しました。そうした場を、形を変えて計3回ほど設けました。

 いきなり、800人の異動を告げられ、最初、あっけにとられていた社員も、だんだんと不安を口にし始めます。そこへ、また私が出て行って話をする。そのことで、「社長がそういう考えで判断したのだから、不安や文句を言っていないで受け入れよう」となるのです。
 ペーパーや全社メールで告げられたり、あるいは、報道を通じて知ったりするだけだと、社員のあいだにあらぬ考えや噂が広まり、不安が増幅します。実際、今回の構造改革についても、一部のネット上ではネガティブな言説が散見されました。ですが、こういう時こそトップが姿を見せるだけで、現場の捉え方はまったく変わってきます。社長が前に出て笑っているだけでもみんな安心するものです。これは、東日本大震災の時にも、すごく感じました。

 心がけた最後の3つ目は、なるべく早く異動を完了させる、ということです。今回は7月24日に発表し、25日に1600人を集めた最初の説明会を開き、その場で異動対象者も告げ、8月1日に異動を完了するというスケジュールで行いました。800人を、約1週間で異動させたわけです。

 急に決まり拙速に行ったわけではありません。あえて、短期の異動完了を狙ったのです。それは、残る人と異動する人が混在する期間をなるべく短くしたかったからに他なりません。

 残る人と異動する人が混在していると、それぞれの立場に分かれてそれぞれの不安を口にし始めます。さらに残る人は、去る人に遠慮をしてしまい、なかなか新体制への準備を始めることができません。体制変更が分かっていても、実施まで1カ月、2カ月の期間があると、そのあいだ、前向きな話をしにくくなってしまうのです。ですが、速やかに異動する人が出ていけば、残る人だけで何とかしよう、やり方を変えよう、と自発的にやる気になるものです。

 世の中には、大規模な人事異動を実施することだけを告げ、背景や思惑についての説明を尽くさない経営者もいるでしょう。あるいは、「覚悟をしておけ」と数カ月前に人事異動の事実を告げる経営者もいると思います。ですが、対象となる社員のことを考えれば、それらは愚行と言えます。自分自身が対象者であったらどう思うのか、一考すればすぐに分かるでしょう。
〜ここまで〜

人事異動時のやり方
・ 残る方がいいのか去る方がいいのかを分からなくさせる
→残る方、少ない人数で今までの結果を出す。去る方、新しい魅力的な職場を用意する
・ 背景や思惑についての説明をしっかりと行う


0 件のコメント: