2016年11月10日木曜日

権力が最高品質のクリエーティブを生む 〜気になった記事〜

インターネットのサービスやスマートフォン向けアプリは飽和状態にあります。単なる機能や内容だけではなく、デザインなど「クリエーティブ」の品質がより問われ、ごまかしがきかない時代となりました。トップが仕切らなければ、最高品質のクリエーティブは生まれない。私がそのことに気づいたのは、ここ数年のことです。

■髪の毛1本にもこだわる


 ゲーム子会社のサイゲームスは「グランブルーファンタジー」などスマートフォン向けゲームアプリで大ヒットを飛ばし続けています。そのトップ、渡邊耕一社長は元ゲームクリエーター。教科書に載っているような経営論を熟知しているタイプではありませんが、彼は、グラフィックから操作性まで、とにかく最高品質のクリエーティブにこだわり続けたのです。

 それは、キャラクターの髪の毛1本の質感も妥協せず、満足がいかなければ配信を延期するほど。端から見ていて、「それでは会社がつぶれるぞ」と心配になるくらいでした。しかし、出すゲーム、出すゲームが次々とヒット。彼のクリエーティブにかける情熱やゲーム品質の高さが高収益につながっていったのです。

 考えてみれば、米アップルの創業者で前CEO(最高経営責任者)のスティーブ・ジョブズ氏も、製品のデザインやアプリケーションのグラフィックといったクリエーティブに対して、並々ならぬ情熱を注いだ経営者でした。自らクリエーティブを仕切り、妥協を許さず、満足いくまで何度も作り直しを命じた逸話が伝えられています。

 資金と人員を動かすことができる「権力」をもった人間こそ、クリエーティブのディレクションに責任を持ち、最高品質にこだわることができる――。私は、規模は違えどサイゲームスとアップルという2つの会社から、そのことに気づかされました。

 クリエーティブの品質を最高レベルまで高めるのは容易ではありません。開発予算や納期、人員など、プロジェクトには必ず制約があります。加えて、関連する様々な部署ごとにいろんな事情を抱えており、結局はそれらすべてのバランスをとった妥協の産物が生まれてしまいがちです。

 そうした制約や事情は、やはりトップの権限なくして乗り越えることはできません。時には会社全体から資金や人員を寄せ集め、一時的な収益悪化も覚悟でクリエーティブの品質向上を優先させる。真の意味でクリエーティブをコントロールできるのは、権力を持ったトップだけなのです。

■現場から嫌われても

 私はサイバーエージェントを創業して以来、会社の制度を整えたり、強い営業部隊を築いたりと、経営者らしく振る舞うことに必死でした。確かに、そうした努力は会社全体の強みにつながったのですが、トップがクリエーティブを仕切る重要さに気づいて以降、自分の経営スタイルをがらりと変えました。

 クリエーティブに微に入り細に入り口を出し、現場から嫌われようが妥協は一切、許さないようにしました。昨年5月に開始したスマートフォン向け定額制音楽配信サービスの「AWA」しかり、今年4月に本開局したインターネットTVの「AbemaTV」しかりです。

 私自身にサイゲームス社長やジョブズ氏のようなクリエーティブの才覚があるのか。そう疑問に思われている読者の方もいらっしゃるでしょう。しかし、私は持って生まれたセンスや美意識が最も重要な訳ではないと思っています。重要なのは、現場から出てきたクリエーティブが既存の最高品質のものに比べて優れているかどうか、ユーザーにどう受け止められるか。そのくらいの目利きはできます。そして、さらに重要なことは、突き返す勇気なのだとも思っています。

〜ここまで〜
品質にこだわりを持つ!

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