2016年6月23日木曜日

大プロジェクトの幹部に「イエスマン」を求めた理由  〜気になった記事〜

人に任せて」甘かったと気づいた

 このAbemaTVは、私が総合プロデューサーとしてプロジェクトを指揮しました。その際、意図して私の言う言葉に疑いを持たず、全力で支持、協力してくれる体制をつくりました。言葉は悪いですが、幹部に据えた人材全員に「イエスマン」になるよう求めたのです。

 ただし、私は手柄を独り占めしたいタイプでも、権力を握りたいタイプでもありません。それに、そもそもサイバーエージェントは、「人に任せて伸ばす」という経営スタイルを得意としており、それが成功体験となっています。

 任せる時は「中途半端に口出しをせず、とにかく一任して気持よく仕事をしてもらう」と決めており、それが会社の規模拡大の源泉となってきたという自負があります。例えば最近では、広告代理店事業やゲーム事業について、主力事業であるにもかかわらず、私はほとんど見ていません。そうした任せている事業に関するニュースを、極端な話、朝、新聞で知ることもあるほどです。

 だからAbemaTVに関しても、プロジェクトが立ち上がった最初のうちは、ある程度は担当役員に任せていました。しかしその考えが「甘かった」ということに、すぐに気づくのです。

 AbemaTVの構想はある意味、私のアタマの中にしかありませんでした。地上波テレビと同等の質のコンテンツを、スマートフォン向けに24時間無料でテレビのように流し続けるという、世界的にも類をみないメディアです。しかし現場からは、「同じようなモデルの他社の動画配信『NOTTV』は撤退が決まった」「テレビ型ではなく、オンデマンド型の方が時代にあっている」といった声が噴出しました。

■かつての失敗

 これまでにない新しい事業を立ち上げる時、不安要素やダメな理由はいくらでも言うことができます。しかし、それでは全く新しい斬新なサービスなど立ち上がりません。ましてや内部からの不安をあおるような声は、皆の動揺を誘います。「これでは間違った方向に進んでしまう」と憂慮した私は、すぐに手を打ちました。

 私の直下で働いていた担当役員には、私の求めることに「NO」とは言わず、イエスマンに変わるよう求めました。加えて、常に「満額回答」をくれるような人材をこのプロジェクトの幹部として招集し、私自身が現場に対して細かく口を出す体制へと刷新したのです。幸い今回は、過去の経験が生きて早期に気づくことができ、プロジェクトは軌道に乗りました。

 この経営者ブログで2年前に掲載した「若い経営者を待ち受けるワナ」という記事でも触れていますが、私はかつて、「Ameba(アメーバ)」というメディア事業を立ち上げるにあたり、任せることと、人任せの「無責任」を履き違えてしまい、苦慮した経験があります。この時、私は任せていた幹部3人を更迭し、私の求めることに応えてくれる幹部に入れ替えました。

 断っておくと、当時更迭した3人は皆、能力が高く、その後も別の分野でそれぞれ活躍しています。加えて、そのような手法は、独裁的で、人が育たないと批判されがちであることはわかっています。それでも、ゼロから新しいものを生む時は、全社が一丸となるような勢いやパワーが必要なこともある。1人のリーダーが圧倒的な強権をもって臨まないと前に進まないこともある。そのことを、私はかつての経験で学んでいたのです。

 任せて伸ばすのか、全責任を負って独裁的にやるのか。状況を見極めつつ、この正反対の経営スタイルを使い分けていくことの重要さを、今回も改めて学びました。最後に、今回イエスマンとなってくれた幹部たちも、皆、事業を成功させるために私に協力してくれているだけであり、もちろん日ごろは自分で考え自律的に動くことができる優秀な人材であるということを付け加えておきます。

〜ここまで〜
任せて伸ばすのか、全責任を負って独裁的にやるのか。状況を見極めつつやるしかない。

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